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なかなか売れない第四文化村。 [気になる下落合]

第四文化村広告.jpg
 少し前に、目白文化村Click!の中で第三文化村までは販売されたけれど、第四文化村は箱根土地(株)によって販売されなかったのではないか?・・・というお話を、地元の方からうかがっていた。それが気になっていたので、きょうは第四文化村の販売について書いてみたい。
 第四文化村は、1925年(大正14)9月から売り出しが開始され、翌1926年(大正15)7月に完売された・・・ということになっている。箱根土地が作成した、1926年(大正15)7月17日付けの「目白文化村分譲地割図(第四文化村)」を参照すると、確かに1年弱で完売したことになっている。でも、上掲の東京朝日新聞に掲載された媒体広告は、1926年(大正15)9月29日付けのものだ。2ヶ月前に完売しているはずの第四文化村なのに、なぜ再び新聞広告で販売を告知しているのだろうか? 同広告のキャッチとボディコピーを引用してみよう。
  
 坪三十五円より/第四目白文化村土地分譲
 ◇交通 恵まれたる高台にして眺望よく目白駅より約十丁乗合自動車にて五分近く開通する西部(ママ)鉄道の停留所へ二丁
 ◇単価 目白文化村最後の分譲で道路下水の敷設は勿論すぐ近く迄瓦斯が来て居ます一坪三十五円より特売致します/箱根土地 丸ビル出張所
  
 西武鉄道を西部鉄道としているのがおかしいが、ここで停留所(駅)まで「二丁」(約220m)としているのは、氷川明神前に開設予定の下落合駅Click!ではなく、ふたつめの中井駅のほうだ。また、広告では「恵まれたる高台」とうたっているけれど、第四文化村は高台ばかりではない。佐伯祐三Click!が描く「雪景色」Click!の急斜面があり、谷底には第一文化村の弁天池Click!を発した渓流が流れている深い谷戸のひとつだった。松下春雄Click!が描いた『五月野茨を摘む』Click!にも、第一文化村の水道タンク左手に、深く落ち込んだ第四文化村に建てられた赤い屋根の家が1軒描かれているのが見てとれる。また、落合尋常小学校Click!(現・落合第一小学校)に隣接していて、他の文化村のように静寂な環境だったかどうかは不明だ。
第四文化村地割図.JPG
 この坪単価が35円というのは、それまでの目白文化村から見れば、もう超破格というか棄て値に近いような価格だったことがわかる。1925年(大正14)9月、つまり第四文化村が販売されたのとまったく同時期に、あめりか屋Click!が作成した不動産を紹介する広告が残っている。この年から、あめりか屋は西洋館の建築請負いばかりでなく、不動産の仲介業にも参入しているので、目白付近の物件情報を掲載した広告を作成していたのだ。
 それを参照すると、目白文化村の物件が2箇所紹介されている。ひとつは、70坪で16,000円の平屋付きの宅地。平屋があるとはいえ坪単価が228円と高いので、おそらく第一文化村の敷地だろう。もうひとつは、150坪で14,000円の土地物件。坪単価は93円なので、敷地の広さを考えると第二文化村ないしは第三文化村だと思われる。また、目白文化村ではないけれど「目白 箱根土地分譲地ノ内」とあり、37坪で坪単価が80円となっている。おそらく、目白文化村よりも西側のアビラ村Click!(芸術村)か、あるいは現在の聖母病院界隈の土地ではないだろうか。この時期、東京土地住宅(株)Click!は経営に行き詰まり、下落合での事業を箱根土地に移譲している最中だったと思われる。
あめりか屋広告.jpg
 こうしてみると、目白文化村の人気がいかに沸騰していたのかがわかる。ちなみに、東京土地住宅が開発し、途中から箱根土地が事業を引き継いだ、山手線の目白駅に隣接する近衛町Click!の物件を見ると、坪単価が120円となっていて、目白駅よりはるかに遠い目白文化村(おそらく第一文化村)よりもかえって安く、立地的にも不自然な逆転現象が起きている。これらの事実を踏まえれば、1926年(大正15)9月現在に付けられた第四文化村の坪単価35円が、同じ文化村の6分の1から3分の1の価格、ほとんど投げ売りに近い地価だったことがわかる。
 では、1926年(大正15)7月17日には完売していたはずの第四文化村が、なぜ2ヵ月後に再び新聞広告まで打って売りに出されているのだろうか? これはわたしの想像だけれど、おそらく土地を手に入れ実際に家を建てようとした人、あるいは現地を仔細に観察した購入予定者が、続々と辞退したからではなかろうか? 谷底から高く土を盛り、大谷石で頑強に築垣しているとはいえ、もともとは渓流が流れる湿気の多い谷戸状の地形だ。現在のように、川の完全な暗渠化がなされておらず、陽当たりの心配も多分にあった当時、目白文化村の人気にまどわされ急いで土地を購入予約したものの、冷静になって現地を見ると二の足を踏んだ人たちが少なからずいたのではないか。同年7月には購入予約で埋まったものの(現地を見ずに予約した地方の不在地主も中にはいただろう)、彼らが実際に現場に立ったとき、大きな不安や懸念を感じたのではないだろうか。
第四文化村スキー場跡.jpg 西武鉄道広告1927.jpg
 1929年(昭和4)10月、第四文化村につづいて「第五文化村」が売り出されたことになっているけれど、同村の地割図も売り出し広告も、いまのところともに見つからない。おそらく、「第五文化村」は第二文化村または第三文化村の売れ残りの土地か、または箱根土地が社員寮を予定していた第二文化村の敷地(現・下落合教会Click!/下落合みどり幼稚園)、さらには第四文化村の“焼き直し”なのかもしれない。でも、第四文化村は土地を新たに造成し、1925年(大正14)9月より新聞紙上でも広告を打ちつづけるなど、確かに販売されているのだ。

■写真上:東京朝日新聞1926年(大正15)9月29日号に掲載された、第四文化村の販売広告のひとつ。同年7月17日には、第四文化村はすでに“完売”していたはずなのだが・・・。
■写真中上:箱根土地が1926年(大正15)7月に作成した、第四文化村の地割図。すでに全敷地が購入(予約)となり、書き込みの数字から販売当初は坪単価80~90円だったことがわかる。
■写真中下:あめりか屋が第四文化村の販売と同時、1925年(大正14)9月に作成した「土地紹介業の開始」の広告。同社がよく家を建てていた、目白文化村や近衛町の物件が見える。
■写真下は、第四文化村の谷底から佐伯の「雪景色」に描かれた文化村の“スキー場”跡の斜面を仰ぎ見たところ。急斜面には、いまでも山手通りへとのぼる細いバッケ階段が見られる。は、1928年(昭和3)4月15日の東京朝日新聞紙上へ掲載された西武鉄道のお花見広告。山手線のガードをくぐって新設されたばかりの高田馬場駅までが描かれ、西武鉄道が自ら同電鉄を「西武電車」と呼称している点にご注目いただきたい。正式名称(社名)と、同線の呼称とが当初から(西武鉄道自身によっても)分離していたのを示す広告だ。
 


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ChinchikoPapa

お書きのレイ・ドレイパー(tub)に惹かれて、彼の参加したアルバムを集めたことがありました。でも、人と話をするとやはりピックアップされるのは、Prestigeのトレーンとのアルバムでしたね。nice!をありがとうございました。>xml_xslさん
by ChinchikoPapa (2008-11-22 18:57) 

ChinchikoPapa

うちの周囲でも、お年寄りのいる家庭のリフォームが数年前から多いですね。
nice!をありがとうございました。>一真さん
by ChinchikoPapa (2008-11-22 19:03) 

ChinchikoPapa

街では、ヒヨドリの声がけたたましく響くようになりました。あの声が聞こえると、もうすぐ隣りに冬が近づいてますね。nice!をありがとうございました。>takagakiさん
by ChinchikoPapa (2008-11-22 19:06) 

sig

こんにちは。
niceを入れてもプロフ画像が示されないのでサイドniceを入れると「あなたは既にnice!を行っています。一定件数以上前のnice!は表示されませんのでご了承ください。」と出て、しかもプロフは依然として示されませんね。
といって、ここで「送信」すると、プロフが示されることもあるんですよね。
さて今回はどうでしょうか。(記事内容外の話でごめんなさい)
by sig (2008-11-23 15:09) 

sig

今度はプロフも書き込みも表記されましたね。
by sig (2008-11-23 15:10) 

ChinchikoPapa

sigさん、コメントとnice!をありがとうございます。
そうなんです。わたしも、この前から悩まされています。特に、夕方から夜間にかけてnice!を送ると、なかなか表示されないんですよね。おそらくトラフィックの高まりで、表示が遅れているのだと思うのですが、そのタイムラグがだんだん長くなっているような気がします。まるでバッチ処理をしているような・・・。^^;
もうひとつnice!で悩ましいのは、管理画面と記事画面とでも“時差”があるようでして、管理画面ではnice!をいただいてることになってるのに、記事の下段には表示されておらず、ほんとうにリプライコメントを書き込んでもいいのかどうか・・・という問題ですね。いずれにしても、せっかくいただいているのに、あまりにも遅いリプライですと、ちょっと失礼になってしまいますので悩ましいのです。
by ChinchikoPapa (2008-11-23 17:31) 

ChinchikoPapa

こちらにも、nice!をありがとうございました。>kurakichiさん
by ChinchikoPapa (2009-07-08 15:25) 

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