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黒田初子のおすすめクッキング。 [気になる下落合]

 黒田初子.jpg
 アルピニストの黒田はつ子(初子)Click!は、早い時期から料理にも興味をおぼえたのか、特に戦前は洋食づくりや、“うまいもん”(彼女は山手なのでエッセイでは「うまいもの」と表現)の食べ歩きに関する文章を数多く残している。戦後は登山家としてよりも、料理研究家としての活動のほうが有名になってしまった。ラジオやTVへの出演はもちろん、料理教室を各地で開催している。
 1938年(昭和13)発行の『スタイル』6月号に、黒田はしゃれたレシピを寄せている。同じページに、長谷川時雨Click!も得意なお手軽レシピを載せているけれど、ふたりはまったく対称的だ。
  
 チーズ スーフレエ
 (前略)バタでメリケン粉をいため牛乳少しづゝを加へて、よくまぜ、白ソースの固いものを作り、塩小匙一と、胡椒少々をまぜ、チーズのおろしたものを入れ、火を細くして黄味(ママ)を加へ、最後に泡立た白味(ママ)を軽くまぜて、焼型に入れ、三十分強火の天火で湯煎にする。そしてプウツと膨れ上つたら、極く熱い所を食す。
 イクラのカナツペ
 私は食パンを丸型に切つてイクラをのせた、美味しい、カナツペを作ります。食パン四分の一斤にイクラ五センで、ちよつとしやれた、オールドーブルが出来ます。
  
 ふたつとも実に美味しそうなのだけれど、現在からみればすぐに味が想像できてしまう料理だ。当時は、きっとものめずらしさも手伝って、ことさらおしゃれでお手軽な西洋料理に思えたのだろう。
 
 乃手らしい黒田のレシピに対して、長谷川時雨のほうはいかにも東京の町中らしいレシピだ。
  
 おしづけ
 どちらでもなされます軽いおし漬け、大根、きうり、うど、しそ、生姜、めうがの子などのうち、まだ晩春や夏のはじめ、紫蘇などがない時に、木の芽(さんしよ)を入れると結構です、黄瓜のかわりに、細い蕗をサツと青く湯に通して、裂いて加へても(召上がる前がよろしうございます)。茗荷たけのほの紅みのあるのが欠けた時、防風(浜ぜり)の茎をまぜるのも悪くございません。
 白たま
 白珠の粉に碾茶を入れますと清新です。上品さは抹茶に負けますが紅茶は案外よい風味をもちます。薫りもこの方がよく残ります。色もよく染まります。蘭の花を入れたウーロン茶などを濃いめに(普通より)して、それで粉をお練りになつて、湯煮なさると中々よろしうございます。お抹茶の方も粉で入れるより、手数でも一度茶筌で掻廻し、よくたててから、それで白玉粉を練つた方がよいやうに思はれます。
  
 昭和の初め、ようやく一般家庭の台所は主婦の“座り働き”から、立ったままで動きまわれるスペースへと変貌していった。関東大震災Click!では、電気に比べてガスの復旧が大幅に遅れたため、多くの家電製品が台所へ導入されるきっかけとなった。キッチンの設備が洋風化すれば、自然に洋食がつくりやすい環境も整うことになる。電気調理器とガス器具がセットになった、今日でいうシステムキッチンClick!が手ごろな価格で、いっせいに発売されたのもこのころのことだ。
 
 数多くの庶民家庭における、大正期から昭和初期にかけての“キッチン革命”については、また稿を改めて記事にしたいけれど、『スタイル』の記事を読んでいると、立ち働きができる比較的広いスペースに、エプロン姿の洋装の主婦たちが動きまわる姿を想像できる。
 上掲の記事を読んでいて、エプロン姿でチーズスフレを焼く黒田初子と、割烹着姿でおし漬けをつくる長谷川時雨と、ふたりの姿がぼんやり浮かんできた。わたしが横から盗み食いしたくなるレシピは、やっぱり長谷川時雨のほうだ。もちろん、ピシッと手の甲をひっぱたかれるだろうけど。(^^;

■写真上は、おすすめの焼きたてが美味しいチーズスフレ。は、昭和初期の黒田初子。
■写真中は、1996年に出版された黒田初子『お料理のレッスン七十年-私の好きなレシピ選集-』(草思社)。は、黒田もお得意だったムースだが、これはわたしの1月の誕生日に上のオスガキのGFがうちでつくってくれた、抹茶あずきムース金箔添え+バリ島コーヒーのセット。(^^
■写真下は、大正期まで多かった座り働きの台所(Before)。は、昭和初期に一般化した立ち働きのできる台所(After)。ともに、1931年(昭和6)の『主婦之友』3月号より。


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読んだ! 5

コメント 4

ChinchikoPapa

数年前、梅の木がじゃまになって伐ったことがあるのですが、どなたかにお譲りすればよかったと反省しています。nice!をありがとうございました。>Krauseさん
by ChinchikoPapa (2008-03-22 21:17) 

ChinchikoPapa

放射性炭素の年代測定はいまだ「誤差が大きい」という理由で、日本の考古学界ではあまり重視されていないのが残念ですが、それにしてもとんでもなく古い測定値ですね。nice!をありがとうございました。>一真さん
by ChinchikoPapa (2008-03-22 21:24) 

ChinchikoPapa

子どものころ、山を歩くとよく酸っぱい「イタドリ」を食べました。東京では「スカンポ」と呼ぶことが多いですね。nice!をありがとうございました。>xml_xslさん
by ChinchikoPapa (2008-03-22 21:29) 

ChinchikoPapa

いま家では、冬物の衣装が行き場をなくしてウロウロしはじめています。(^^;
nice!をありがとうございました。>takagakiさん
by ChinchikoPapa (2008-03-22 23:23) 

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