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3Dの目白文化村とアビラ村を歩く。 [気になる下落合]

 少し前に、カラスコさんからご紹介Click!いただいた東京地図研究会の『「東京」凸凹地図』(技術評論社)を手に入れ、さっそくアナグリフ作成ソフト「Stereo Maker」を入手した。さまざまな空中写真で試したところ、これがとっても面白い。下落合界隈の街並みが、まるで浮き上がるように各時代の面影をリアルに“主張”しはじめた。
 同一の空中写真をアナグリフ(立体画像)にしても面白いが、飛行コースを変えた多少角度が異なる空中写真を合わせてアナグリフを作成すると、まるで3Dかジオラマのように、当時の街の様子が眼前によみがえってくる。高い建物はそれなりの高さで、低い谷間は落ち窪んで見えるので、地形も手に取るようにわかる。街並みの凹凸を、つい手を伸ばして触れたくなってしまうほど、リアルに再現してくれる。やはり、平面で見ている風景と、擬似にせよ立体で見ている風景とは、まったく印象が異なるのだ。
 さて、空中写真を擬似3D化するのに遊び疲れたわたしは、ふとあることに気がついた。別にアナグリフにするのは、地図や空中写真でなくてもいいんじゃないか・・・。たとえば、絵画をアナグリフ化したら、はたしてどのように見えるのだろうか? さっそく試してみて、驚いた。これが、思いのほかスゴイのだ。たとえば、佐伯祐三の『下落合風景』シリーズClick!をアナグリフ化して、立体視したらどうなるのだろう?
 
 黒沢明監督の『夢』(1990年)の一話に、ゴッホの絵の中へ入りこんでしまう男の話があった。古いところでは、軸の絵に見とれて入りこみそうになる露伴の『観画談』(1925年)や、浅草の覗きからくりの世界へ迷いこんだ乱歩の『押絵と旅する男』(1929年)というのもあった。まさに、あの“迷い”こみそうな世界なのだ。絵の中に吸いこまれてしまいそうなほど、『下落合風景』に描かれた大正期の景色がすぐそこに、驚くほどの奥行き感や凹凸感をともないながら、目の前に出現していた。デッサンがことさらしっかりした、佐伯の『下落合風景』作品ならではの効果もあるのだろう。
 「タンク」では、道の向こうへ歩いていって、「あと20年と少しで、ここに下落合教会とみどり幼稚園が建つんだよ」と、その現場に立ったような錯覚をおぼえる。「テニス」では、まるで球音が響いてきそうだ。風で樹木がいまにも揺れそうな気配と、わたしもテニス仲間に入れてもらいたくなるような臨場感が湧きあがる。第二文化村外れのテニスコートが、意外に広いことも視覚的に確認できる。二ノ坂の最終カーブから、高田馬場・早稲田方面の眺めはどうだろう。この作品も、手前の宅地造成されたばかりの擁壁から、東京電燈の目白変電所と思われる遠景の建物まで、見事に空間感が拡がる。足下に傾斜を感じ、いまにも坂道を下りはじめてしまいそうなほどの臨場感だ。



 いまから80年前の下落合の姿が、佐伯祐三も病んだ肺で呼吸していた当時の空気をほのかに感じられるほど、リアリティあふれる風景としてよみがえりそうだ。いや、佐伯作品に限らず、これは中村彝の風景画Click!などについてもいえるだろう。でも、その臨場感を味わうためには、アナグリフ専用のメガネが必要だ。興味のある方は、かなり安価なので入手はこちらClick!から。
 佐伯の描画ポイントの特定をあらかた終えたら、これはぜがひでも『下落合風景』立体美術館サイトでも起ち上げたくなった。当時の佐伯は、まさか自分の作品がパソコンで画像処理されて、このような楽しみ方に用いられようとは思いもしなかっただろう。彼が生きた時代の下落合の空気を、より深くリアルに感じ取れるかもしれない。これでまた、当分は遊べそうだ。

■写真上:アナグリフの専用メガネ。ひとつ100円前後で手に入る。
■写真中は、東京地図研究会『「東京」凸凹地図』(技術評論社・2006年)。は、「Stereo Maker」を用いてアナグリフ(グレー)化した、目白文化村(第一・第二文化村)の空中写真。
■写真下:上から、佐伯祐三『下落合風景』の「テニス」(1926年10月11日/50号)、「タンク」(1926年10月14日/15号)、および二ノ坂の最終カーブのアナグリフ(カラー)。それぞれ、小さい画面でしかご紹介できないのが残念なほど、リアルで臨場感あふれる風景が出現した。
 


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fuRu

この佐伯のアナグリフは
ChinchikoPapaさんがつくられたのですか?
by fuRu (2006-10-31 09:47) 

ChinchikoPapa

はい、わたしが作りましたからヘタです。
空中写真よりは、佐伯の絵のほうがうまくいってるようです。3Dメガネの青の濃さ薄さによっても、かなり立体の具合が違うようですね。わたしは、濃い目の青で見ながら作りました。
by ChinchikoPapa (2006-10-31 10:24) 

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