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「バチが当たるよ」の臨川地帯。 [気になるエトセトラ]

 西池袋から目白3~4丁目、そして下落合を貫く予定の「補助73号線」Click!(いまだ計画廃棄にならない)の延長線を見ると、公園や学校、図書館などの敷地が多いことに気づく。わたしは、「ははぁ~、またか」・・・と思う。
 東京オリンピック(1964年・昭和39)の前後、下町でも同じようなことが随所で起きた。道路(多くは首都高)を通すために、できるだけ私有地を買収しなくても済むよう、公園や公共施設、河川などが惜しげもなくつぶされた。東京のかけがえのない景観と、都民に還元されていた貴重な社会資本を片っぱしから食いつぶす、あれは土建国家の幕開けを告げる事業だったのだ。大川(隅田川)沿いの公園は大半が跡形もなくなり、公共施設は移転し(多くは用地不足のため移転先も公園内であり、二重につぶされたことになる)、学校も無理に統廃合されて首都高の下敷きになった。中小の河川や掘割にいたっては、見るも無残な姿になってしまった。
 深刻なのは、関東大震災の教訓として帝都復興事業(1923年スタート)により、被害の大きかった下町に造られた避難域としての公園や、防火帯としての緑地が寸断され、その多くがつぶされてしまったことだ。「ここまでくれば安心」と設置された公園や防火帯が、阪神大震災時のように道路の高架がいつ倒壊してくるかもしれない、むしろ危険地帯と化してしまった。特に、大川沿いの公園つぶしは徹底していて、見るも無残だった。
 
 わたしが物心つくころには、川面から垂直に立つ不粋な「隅田川堤防」は、とうに築かれていた。俗に「カミソリ堤防」などと呼ばれ、子供のわたしは背伸びをしても、大川の水面を見ることができなかった。戦後すぐのころ、キティ台風かなにかで、下町が浸水したときに築かれた防潮堤らしい。でも、うろ憶えだけれど、いずれかの橋へと出れば、両岸の公園や緑地帯、遊歩道などが一望できて、まだそれなりの景観を保っていたように思う。周辺の住民は、大川の“親水風景”を見たいと思えば、ほんの少し、近くの橋まで歩くだけでそれを目にすることができた。だが、岸辺の公園をつぶして高速道路ができたことで、川はコンクリートと騒音のちまたと化し、東京を代表する景観のひとつが、防災上の安全性とともに台無しになってしまった。
 高速道路の下に、少しでも緑地や公園を復活させるのではなく、墨田公園跡の高架下を「パーキングスペースとして有効活用しよう」という墨田区のパフレットを見て、当時、『東京人』に連載を執筆していた越澤明はこう書いている。
  
 「(前略)冗談じゃない。あそこは帝都復興事業でつくった臨川公園が破壊された残骸、“遺跡”なのだよ。本当にリバーフロントを考えているのなら、過去の歴史を学び、少しでも“遺跡”の復元を図るべきではないのかね。そうしないと、バチが当たるよ」
  
 
 もともと、大川両岸に延々と造られた公園は、「親水」の思想をベースに関東大震災の教訓や経験を踏まえ、避難場(路)と防火のコンセプトが活かされていた重要なスペースだった。だが、震災後40年がすぎた1960年代半ば、のど元すぎれば・・・の喩えどおり、下町の避難路の“動脈”は片端から断ち切られてつぶされ、高速道路が頭上に重くのしかかることになる。
 10年以上も前に、「ウォーターフロント」という言葉が盛んに流行った。でも、それは東京の河川や海を有効に活かし、都市の景観や安全をどう確保・保全するか・・・という方向性ではなく、結果的には大震災で甚大な被害をこうむるであろう、川や海に面した脆弱な地盤へ高層オフィスビルや高層マンションを林立させるのに終始しただけ・・・のように見える。
 越澤式にいえば、本格的な「バチが当たる」のは、実はこれからなのだろう。

■写真上:昭和初期に造られた臨川公園の名残り。言問橋に残る墨田公園(浅草側)の手すり。
■写真中は、完成直後の墨田公園(向島側)。低い手すりの向こうに見えているのは言問橋。は、同所の現状。高速道路の高架ばかりでなく、元公園内には車道まで造られている。
■写真下は、東武線の鉄橋下から吾妻橋方面を望む。大川の右手(浅草側)には、かろうじて公園や並木のスペースが残るが、川の左手(向島側)は高架でふさがれていて、災害時の逃げ場や避難ルートがない。は、言問橋上から眺めた墨田公園(浅草側)。カミソリ堤防の苦情が多かったせいか、いまでは前面に親水スペースの公園が設けられ、緑が植えられている。


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