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近衛家の売立入札目録。 [気になる下落合]

 先週、下落合2丁目の近衛公爵邸の庭にあった不可解な木について書いたが、近衛家が負債に困窮し庭園を切り売りする直前、1918年(大正7)に行った売り立てについて調べてみた。そして、売り立て用に印刷された、「売立入札目録」(オークションカタログ)を見つけた。これが非常に豪華で、まるで美術館か博物館の来館記念カタログのようだ。中身に掲載された「道具」類も、想像を絶する内容だった。
 元大名家ならともかく、元公家がさまざまな「道具」類を持つことはまれだ。江戸時代には、公家は貧困のどん底にあえいでいた。明治末から大正時代にかけて、華族の売り立てが頻繁に行われたが、そのほとんどすべてが元大名家のオークションだ。しかし、近衛家は代々公家の中でも随一と呼ばれる「道具」収集家だったから、目録の内容も並みではない。たった1日の売り立てのために、とんでもなく豪華なカタログが作られている。近衛家では2回のオークションが行われているので、このような豪華なカタログがもう1冊存在することになる。2回目の売り立て時、1日だけで近衛家が得た落札金額は、130万円を超えていたという。いまのおカネに換算すると、なんと33億円にものぼる。しかし、これだけの落札額にもかかわらず近衛家は負債を清算できず、ついに広大な庭園を切り売りすることになったのは、前回記したClick!とおり。
 ちなみに、どのような「道具」が売り立てに出品されていたのか見てみると、そのほとんどすべてが国宝か重要文化財に即日指定されるようなものばかりだ。いちばん象徴的なのが、刀剣道具のカタログページ。写真の説明には、拵え(刀の外装)の名称しか書かれていない。つまり、肝心の中身の刀身についてはなにも書かれていないのだ。通常は刀の銘と造り、長さなどを明記し、次に拵えが付属すればその名称を付記するのが、売立入札ではあたりまえ。だが、近衛家ではこの当然の表記法をとらず、刀剣の外見だけの名称を入れている。中身の太刀や刀は銘をうたうまでもなく、「名刀に決まってるじゃないか」というわけだ。 事実、近衛家の道具は、すぐにも東京国立博物館の刀剣室へ展示されてもおかしくはない品ばかりだった。その入札目録の刀剣ページと、当時、落札された価格も調べてまとめてみた。(近衛家売立入札目録Click!) いちばん高い落札額で、「牡丹目貫金無垢造鞘牡丹蒔絵飾太刀拵」(ぼたんめぬききんむくづくりざや・ぼたんまきえかざりたちこしらえ)の5千円。いまの金額に換算すれば、1,350万円と意外に安い。(^^; 刀銘は不明だが、位列の低い刀工や、ましてや偽物がはいっているわけがない。いまなら、億はくだらないだろう。大正末期から昭和初期は、前田家、伊達家、徳川家(水戸・尾張)、秋元家、稲葉家、酒井家、島津家…と「道具」持ちで知られる、名だたる元大名家が困窮して売り立てを行っているが、近衛家のこの刀の価格は最高値を記録し、いまでも語り草になっている。

 刀剣で「長さ」といえば、刀身の全長のことではなく刃長のことで、ハバキ元から鋩(きっさき)までの長さをさす。柄の中に隠れてしまう中心(なかご)の部分は、刀の長さに含まれない。


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Marigreen

ハバキ元ってどこの部分を指すのですか?
by Marigreen (2012-11-10 14:43) 

ChinchikoPapa

鍔(つば)の刃身側に、袴をはかせるように付属しているのが「ハバキ」で、その間に詰まった切羽(せっぱ)とともに、鍔を固定する役割があります。その「ハバキ」の内部、刀の刃部が終わる「まち」の部分までが、刀の長さということです。柄(つか)の部分まで含めた計測値が、たとえば100cmあったとしても、それは刀の「長さ」にはなりません。ハバキ元までの、たとえば70cmが刀の長さ・・・という規定になります。
by ChinchikoPapa (2012-11-10 20:49) 

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